研究の手法

まぁ、朕はやっとこの境地に達したのだが…って感じの朕だ。
さりげなく、こっそりと、皇帝の皇帝による皇帝のための日記スタイルを復活させて三日目である。やはりこの方がモチベーションを維持できる気がする。
さて、朕は最近、「研究ってどうやるの?」っていう後輩の多さに困惑している。もちろん、「言うのは簡単、やるのは大変」というのは間違いない。しかし、「知っていてもできない」よりは「知っているけど練習不足」の方がいいような気がするので、朕はどうするかを説明しなければならない。説明する際には、学生が興味を持っている研究対象を基にはしない。なぜなら、自分が自分自身で選んだテーマを研究しているにもかかわらず、「どうやるの?」と言っているのだから、それを基にして教えることはできそうもない。そこで、誰でも考えやすい話題にすりかえるわけだ。
朕の場合は不謹慎ながら「殺人事件」を基して説明する。よく例にするのは「浮気性の男に浮気された女の殺人事件」である。

私はキバ子。B作さんとお付き合いしていたの。でもB作さんったら、他にも6人の女と付き合っていたのよ。そんなB作さんから、一方的に「別れよう」と言われたわ。私の青春を奪ったB作さん…キバ子、もう許せない! B作さんを殺すしかないわ!!(動機)

でも、普通に殺したんじゃ、私の青春は取り戻せないわ。B作さんが絶望した顔を見なければ、キバ子は満足できない。だからナイフで滅多刺しなんて生ぬるいことは言えないわ。…いろいろ考えたけど、罪の無い人を巻き添えにはできないし、それでいて私の憎しみを晴らせる方法は、両手両足をねじりながら引きちぎってやるしかないわ!!!!(動機を満たす方法の考察。一般の研究においては、研究史に対応するのではないだろうか。)

実行するには、まず器具を作らなければならないわ。…以下略(準備・実行方法を考察。課題の設定に該当)

まず、私はB作さんを呼び出したわ。そして、睡眠薬入りのコーヒーを飲ませたの…(本文。)

そして私はB作さんを抹殺することに成功したわ。そのあと、警察に捕まって、5年刑務所に入ることになったわ。(結論。)

以上のシナリオでは、「キバ子がB作さんを殺す」という目的である限り、成功したと言える。しかし、キバ子が「幸せになりたい」という目的を持っていた場合、これは成功したと言えるのだろうか。なぜなら、B作さえ殺さなければ、刑務所に5年も入る必要は無く、その間に新しい恋を見つけることができたかもしれない。歴史の研究の場合、一通り結果がでた出来事を研究対象とするから、動機の持ち方一つでその評価も変わってくる。だから、学部生には、一つの出来事の結果について、どう捉えたいのか? ということをよく考えてもらうことにしている。
端的に言えば、「その出来事に興味がある」とか、「その出来事を勉強してみたい」という程度では歴史の研究は無理で、それを知りたいのであれば、歴史の教科書でも見ればよいのである。そうではなく、研究するのであれば、「その出来事はこうだと言えるのではないか?」とか「その出来事はこうだと言われているけれども、僕はそうは思わない」といった姿勢でなければならないということである。